家族ってなんだろう(8)ー中学時代ー

子供時代、私と妹の通う学校は違った。私は大学の付属小学校にバス通学していた。妹は近所の公立小学校に友達と集団で徒歩通学だった。

学校から帰れば勉強が待っている私と、友達と遊びに出て行く妹とでは、生活のリズムが全く合わないので姉妹共通の思い出はない。

それどころか、家の中で会うことも少なかったような気がする。

両親と妹がひと部屋に寝て、私の従姉妹たち2名がひと部屋に寝て、私だけが玄関脇の3畳間にいた。
従姉妹とも妹とも話すことはほとんどなかった小学生時代だった。

中学受験をした頃、従姉妹たちは別の親戚の家に移った。私が難しい中学に行ったことで、勉強の妨げをなくすという意味もあったようだった。
従姉妹たちが出て行ったことで、私はますます怒鳴られることが増えた。

中学に合格はしたものの、私は厳しい競争の中で、勉強をそれほどせずに過ごすような脱落者だった。

勉強が楽しいという生徒たちが多い中、私は親からさんざん怒られながら勉強をさせられてきた感が強く、どこにも楽しさを見出せないまま成績も奮わずに3年間を過ごした。

唯一、得意だったピアノを受験で辞めさせられたことにより、私には意欲的にやりたいと思うことがなくなっていた。

中学2年の時に家が遠くに引っ越したため、通学は通勤ラッシュの電車を乗り換えながら片道2時間ほどかけていた。
疲れてしまって、やる気は完全に消えていた。
冬はまだ暗い中、家を出て始発のバスに乗らねばならなかった。

バスで私鉄の駅に出て、電車2本乗り換えて駅からはバスで約25分。
バス停から15分歩いて中学に着く頃には、エネルギーを使い果たしてしまっていた。
ラッシュに揉まれ、肩から下げることもできない7キロの学生カバンを2時間持ち続ける。
指先だけで持たねばならない学生カバンのデザインって、学生に優しくない構造だ、と思いながら通った。
今の高校生なら肩からかけられるバッグだろうが、当時は指先しか入らないようなカバンだったので、私は指に豆を作っていた。

時にはカバンがラッシュの人と人に挟まれて抜けないまま、乗換駅で自分だけが降りてしまうというハプニングも起こる。

痴漢にも合うし、電車に押し込む押し屋のアルバイトの人からしこたま背中を押されたり、カバンに大きな負荷がかかるように人々がのしかかったり、座っている人の上に尻餅をついてしまったり、握り棒がお腹に食い込んで息が止まりそうになったり、、、こんな通学を強いる父を恨む気持ちもありながらも、自分の部屋が妹と同等の広さで妹も一人部屋になったことで、姉妹の扱いが一応同じになったことにホッとする気持ちもあった。

通学が大変になったことにより、部活動もやめ、ただただ通学で疲れ切るような毎日だった。

こんな不便な郊外に父が家を建てたのは、母に相談すらしない独断だった。
土地を買って家を作るというワクワクするような一大イベントでも、母の意見は取り入れられず、当然、私たちの希望など出せない。

引越し前にライフラインの契約など、母はひとりで遠くまで行くことがあった。
雑務については母に全てを任せていた父は、自分では面倒なことは何一つしなかった。
春休みに引っ越すために、冬の寒い日に母は何度も出かけていた。
住んでいた団地から引越し先まで、軽く1時間半ほどはかかった。
家まで行ってから、鍵を忘れたことに気付いた母に言われて、私は鍵を持って最寄り駅まで行った事がある。
その時、
「お父さんには内緒にして」
と言われた。

この時だけではない。
母は何かにつけて、「お父さんには内緒」ということを口にする事が多かった。
母は「あんなところに引っ越したくない」ことも言っていたが、もちろん「お父さんには内緒」のことだった。

引越しのための片付けをしていた時、私は母に聞いた。
「なぜ、お父さんに何も言わないの?それでお母さんはいいの?」
と。
母は思わず本音を漏らした。
「何度も離婚をしたいと思ったけど、私は働いたこともないし子供をお父さんに取られてしまうから離婚できなかった。
 私ひとりで家を出たら、あなたたちがどんな目に遭うかわからないから離婚できなかった」
と、言った。

その時は、もちろん「お父さんに内緒」と言われなくても言ってはいけないことだと私は認識していた。

父は怒鳴って威張り散らすことで家長であることを誇示し、有無を言わせず家族を支配下に置いた。
母は父への愛もなく離婚したいと思いながら、子供のために我慢するだけで家政婦のような存在に徹していた。

家族って、なんだろう?
多感な年齢になっていた私には、家族というものが全く魅力のない、ただのしがらみとしか思えなかった。

そのようなことを子供の私が考えていたことなど知らぬまま、父は自分で建てた家にひとり満足していたようだった。



妹は近くの学校に転校した。
近所にすぐに友達ができ、毎日楽しそうに遊んでいた。

私はもともと近所に友達はいなかったが、それでも同じ区に同級生は何人かいた。
が、この引越しのおかげで、同じ市に住む同級生は一人もおらず、誰も知る人のいない寂しい成人式を迎えることになる。

たぶん父には、私のそんな気持ちなどわかるはずもないだろう。
たぶん、娘に「気持ち」とか「心」があることすら知らなかったのだと思う。


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