名前

 小学1年生の夏休み明けくらいだっただろうか、担任の先生から

 「自分のことを、名前にちゃん付けで言っている人は、そろそろその呼び方をやめましょう」
と、言われた。

 つまり、自分のことを

 「ケンちゃんは、さあ」
とか、
 「ハナちゃんがする~」
とか、幼児の頃によく言う、あの呼称だ。

 それは周囲の大人が、ケンちゃん、ハナちゃんと呼ぶので、自分はケンちゃんなんだ、ハナちゃんなんだと自覚して、同じように呼んでいるからに違いない。

 私は、当時から「わたし」と言っていたので、問題なかったが、友達は自分で自分のことを「ちーちゃん」と言っていたので、彼女がそう言うたびに、私は「ちーちゃん!」と、たしなめる役回りだった。

 この自分名を「ちゃん」付けで自分で言っていたのは、末っ子などに多いように思う。ちーちゃんには、お姉さんがいたが、お姉さんのことは「お姉ちゃん」と呼んでいた。

 そして私も同様だった。私は長女で、生まれた頃には「ちゃん」付けで名前を呼ばれていたのに、妹が生まれた途端に「お姉ちゃん」になってしまった。

 以来、大人になっても、いくつになっても、「お姉ちゃん」「お姉さん」だ。母は死ぬまで、私を「お姉さん」としか呼ばなかった。そして、妹は生まれた時から「ちゃん」付けのファーストネームからくる愛称で呼ばれ、未だに変わらない。うちの子供達まで、叔母である私の妹のことを「ちゃん」付けの愛称で呼ぶ。

 私は子供心に、妹がみんなから名前の愛称を呼ばれているのを羨ましく思っていた。私の名前だって、愛称で呼べそうなものなのに、私は「お姉ちゃん」だった。

 小学生になると、あだ名で呼び合う習慣も生まれる。中には、ファーストネームを呼び捨てにするケースもあったが、私は、名字をもじって呼ばれていた。

 大学生になっても、同じあだ名で呼ばれ、名字から連想することが小学生でも大学生でも同じであることに、内心おもしろいと思いつつ、その馴染み深いあだ名は、結婚して姓が変わっても使い続けられている。

 友達の間では、今でもあだ名が横行しているが、世間では呼び方さまざまになる。

 結婚して香港に駐在していた時は、「マルバツ会社の ○○さん」という呼び方だった。日本人社会というものがあるらしく、そこには序列があった。会社名を頭につけるのは、その序列を明確にするためだったらしい。若い私には、その呼び方がおかしくておかしくてツボだったが、もちろん、そんなこと口に出すこともできない怖い社会だったので、若造は黙って従うだけだった。

 海外では、大使館(領事館)、プレス、銀行、商社、メーカーというランク付けがあり、
「大使館(領事館)の 丸々様」
と、紹介されたら、それだけでひれ伏すほどの効果があった。

 私に言わせれば、「私は、その会社の社員じゃ無いですよ~。夫が社員っていうだけで」ってなものだけど、そんなことを口に出したら、ぶっ飛ばされて地球の裏側にまで行っちゃいそうなので、黙っていた。

 着任早々に、会社の上司の奥様から
「あなたは、会社の看板を背負っているので、そのおつもりで」
と、釘を刺されていたので、なおさら、黙って笑いを噛み殺すしかなかった。

 子供ができると、「マルちゃんのママ」という呼び名に変わった。「の」を省略して「マルちゃんママ」という呼称もあった。

 「丸々さんの奥さん」という呼び方だったり、夫の役職名がつくこともあり、「夫人」という呼ばれ方をすることもあった。

 だけど、どの場面でも、私のファーストネームは忘れられたままだ。実家に戻れば、「お姉さん」だし、学生時代の友達からは、旧姓をもじったあだ名で呼ばれ、日本人社会では「マルちゃんママ」

 私のファーストネームが使われることはないのかしら?と思っていた頃・・・

 50歳過ぎて、保育園で仕事を始めた時、

 「この園では、先生という呼び方をしません。子供達は、みんな保育士のことを名前で呼びます」
と、言われ、私は初めてファーストネームで呼ばれる組織に入った。

先生同士も、お互いにファーストネームに「さん」付けで呼び、子供達も同様だ。
これって、想像以上に嬉しいものだと知った。やっと、私自身を呼ばれている感覚は新鮮でもあり、心が浮き立つ。



 もう少し年齢がいってから、地域の合唱団に入った。当たり前のように夫の姓で呼ばれていたが、しばらくすると、同姓の方が入団し、紛らわしいのでファーストネームで呼ぼうということになった。
私には、相当に嬉しい。

 今いる深センでも、若い方々からファーストネームに「さん」付けで呼ばれている。
どうやら、昔の駐在時代とは変化してきたらしく、ご主人の会社名など知らないケースが多く、名字を呼ぶこともなく、皆がファーストネームで呼び合っている。小さな子からも、ファーストネームで呼ばれると、年齢差も格差も感じなくて済み、親しみがこもっているようで、とても良い気分だ。

 さて、合唱団でファーストネームに「さん」付けで呼ばれている私だが、定演の練習も佳境に入った頃、列を作ってステージに上がる順番を確認していた時、私がステージに乗ったら、次の列の人が動き出すということを演出の人が言った。私のことは、もちろんファーストネームで言った。

 「じゃ、○さんが入ったら、次の列の人が入ってね」
と、指示した。

 「どの○さんですか~~~~」
という声が上がった。

 

 気がつけば、同じ名前の人がこの団には6人もいた!!!

 女性22名のうち、6名が同じ名前って!!!



 すご過ぎません? 年代もバラバラ、出身地も違うのだけど、同じ名前が6人もいるなんて、、、


 どんだけ 大安売りの名前なの!

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この記事へのコメント

パック
2017年06月30日 08:33
ファーストネームですか?
我が家では、世間で同じ名前に当たるのは長男だと思います。
姓名を見てもらったから、市役所へ手続きに行ったのですが、これが当時日本で一番多い名前だったからです。
犬が歩けば、○○(長男の名前)にあたる。と冗談で言っていました。
とはいえ、クラスに同じ名前の人がいたかと言うと一人二人ぐらいではなかったかと記憶しています。
六人ですか?
すごいです。
yu_mama
2017年06月30日 08:52
パックさま
ご長男の名前が、当時の日本一多い名前ですか!! 
毎年、人気の名前ランキング出ますよね。うちの長女の名前は、比較的多いですねえ。クラスでも、会社でも漢字は違っても同じ発音の人が必ずいるようです。
息子の名前は、かなり珍しいので、まだ同じ名前の人に出会ったことがないんです。年代的にキラキラネームでもなく、普通に読めるのですが、印象に残るので覚えていただきやすいです。それが良いことなのか、迷惑なのか、本人に聞いたことありませんけど。
私の名前は、いつの時代にも、なんとな~く上位にいるような、よくある名前です。母がつけてくれたのですが、外国でも発音しやすい便利な名前ではあります。
団に6人って、すごいでしょ。笑っちゃいます。漢字にすると3種類に分かれますけどね。
2017年07月22日 15:28
名前って時代を背負っているのでしょうか
カーブスという筋トレに通っていた頃、インストラクターの方がファーストネームで生徒さんを呼ぶのですが、私と同じ名前がぞろぞろ・・・・・
筋トレ好きなのか・・・この名前は!
英会話教室では、苗字で呼ばれていますが、氏も名前もバラバラ・・・本当に不思議です。
yu_mama
2017年07月22日 15:52
三毛猫さま
筋トレ好きの名前!!(⌒▽⌒)
名は体を表すと申しますから、なんらかの傾向あるのかしら??ナンチャッテ。(笑)
私の名前は、いつの時代にも、そこそこ多い名前で、だいたい複数いることには慣れていますが、それにしても、合唱好きの名前かしらね。
旧姓の時、苗字の同じ人というのは、ほとんど会ったことないのですが、この合唱団にいらしたんですよ。もっとも、旧姓は言ってないので、お相手には伝わっていませんがね。彼が呼ばれていると、なんとなく振り返りそうになります。(^^)

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