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zoom RSS ピアノを愛す

<<   作成日時 : 2017/08/22 01:05   >>

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流れに身を任す」の記事で書いたが、私が今、日本で持っている楽器は バーンスタインというピアノだ。

 今まで、イースタインから始まり、ベルトーン、バーンスタインというピアノを選び、大手メーカーの大量生産品をスルーしてきたのは、わざとスルーしたわけではなく、偶々のことから始まった。

 今のバーンスタインは、ピアノ店で自分であれこれ弾いて選んだ結果だ。

 その大事なピアノだが、日本に置きっぱなしで、ここ3年ほどは調律もしていなかった。

 何ヶ月かぶりで日本に帰るたび、そのピアノはビロローンと情けない音になってしまい、がっかりだった。しかし、誰も弾かないのに、調律を頼むというのも勿体無い気がして、音には耳を塞いで練習をしていた。練習をするうちに、少しは調整されてくるのも楽器の特徴だ。

 今回、50歳の花嫁の旦那様が、日本でも指折りのベーゼンドルファーの調律師であるのを良いことに、我が家のピアノを見てもらえないか打診してみた。

それは、深センに戻る数日前に実現した。
世間は山の日という祝日だった。コンサートピアノの調律を仕事としている方だから、土日祝祭日に仕事になる可能性は大きいが、運良く仕事がないという。

 「そんな貴重なお休みに申し訳ない」
と、言いつつも、私はピアノを見てもらえるのが楽しみだった。

 彼女から、旦那様に予定を聞いて時間を決めてもらい、
「ピアノの後に飲みに行こう!」
という話を持ちかけられた。

私に異議のあるはずもなく、話はとんとん拍子にまとまった。

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 皆さんは、「羊と鋼の森」という本を読んだことが おありだろうか? 

 まさに、あの本の世界が現実に起こっているかのような「整音」という作業を、私は目を凝らして見続けた。

 彼の手にある小さな道具は、先端に細い針がいくつもついていて、それをフェルトに突き刺しては音を確認するという作業を繰り返した。何度か、針を抜き差しし、音を確かめると、整音されたそのキーだけが他とはまったく味わいの違うまろやかな音色に変わった。

 「これ!!!これです。私、このピアノの低音部は大好きなんですけど、肝心なよく弾く部分が違う気がして」

 私が何も言わなかったのに、彼はそこを見透かしたかのように音色を変えてくれた。たったの1音だけを響きよく整音し、私の反応を伺ったようだった。

 私が歓喜の声をあげ、心から喜んだことで、彼は「してやったり」と思った(かどうかは知らないが)、黙々と作業を続けてくれた。

 その日は、ピアノを見るだけの予定だったので、私はまさかこのような作業をしてくださるとも思わなかった。もちろん調律までする時間もないだろうから、見てもらって、このピアノをもっとよくするには何をしたら良いかを判断してもらえたら、それだけで良かったはずだ。

 しかしね、たった1音でも、こうも音色が変わると欲が出てくる。

 私の好きな低音部となんら遜色のない良い響きに手を入れてくださったピアノで、早速、ピアニスト妻がモーツァルトソナタを弾いてくれた。

 「いい!! 響きが断然よくなった」

 そうなると、調律していない音の狂いが気になる。

 やおら道具を持って立ち上がった彼が、ちゃっちゃと調律を始めてくれた。

 
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 コンサートピアノを短時間で仕上げなければならないこともあり、いくつもの現場をこなしてきた彼には、30分でやれ!と言われたら、サクサクできる技術があった。通常は2時間かけて、しっかりと調律、整音をするものらしいが、とりあえず、今この場で気持ちよく弾ければいいという急ぎの場合には、30分で仕上げるのだという。

 すぐに深センに戻ってしまうのだから、とりあえず簡単に調律してもらえれば十分だった。

 そして、仕上がったピアノは、実に気持ちよく演奏でき、上質で豊かな響きを発してくれるようになった。

 今まで、狂った音でも我慢して弾き(あ、でも、3年間調律していなかった割に、思ったほど下がっていなかったと言われた)、中間部の響きが低音ほどではないことに妥協していたのが、嘘のように別物のピアノに生まれ変わった。

 羊と鋼の、、、羊に手を入れ、鋼を調整し、果てしない森の奥に吸い込まれるような音色に変わったピアノは、いつまでも弾いていたい、弾いていて楽しい、心が浮き立つ楽器になっていた。


 「このピアノ、買ってから31年でしょ。いいピアノだよ〜。長く使って欲しいな」
と、言われた。

 私が31年前、上野の芸大の近くで見つけたバーンスタイン。

 あの時の私の耳に間違いがなかったと、31年経って証明されたようで嬉しかった。

 専門家のお墨付きを頂いたピアノ

 一生大事にしようと思う。

 その日、謝礼を受け取ってくださらないので、私のお気に入りのワインバルにお連れして楽しい時間を共にした。

 そこでもピアノの話をたくさん聞けて、、、、幸せだった

 

 ああ!! マイピアノ 弾きたい

   (深センのピアノは、残念ながら電子楽器なので、羊も鋼もない。ピアノではない。)

 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
ピアノは調律師さん次第でずいぶん変わりますから、感動なさったのがとってもよくわかります♪
いい調律師さんに巡り会えたのはよかったですね、うらやましい限りです。
羊と鋼の森 図書館で予約しようと思っているのですがいつもたくさんの人の予約が入っていて予約すらしてませんでした。
これ、購入してもよさそうですね。
ピアノ弾きにたくさん日本に帰国できますように。
ミルテ
2017/08/22 22:26
ミルテさま
良い響きで揃うと、弾いていて本当に気持ち良いですね。
素晴らしい調律師さんとの出会いは、友達ピアニストさんのおかげでして、そのピアニストさんと知り合ったのが合唱だった、、、ということを辿りますと、何もかもが繋がって行く心地よさを感じます。人との出会いは大事にしなくっちゃ〜って思います。

この本、良かったですよ。文章が丁寧で、それがピアノの調律を丁寧にすることと繋がっていて、時間の流れが静かなピアノの音と共に流れる感じでした。ぜひ、お読みくださいな。

こちらの電子楽器で弾くと、なんだかガッカリです。指にも身体にも負担が大きいです。ピアノの音に限りなく近いし、調律も不要だから、湿度の高い深センでは電子楽器が最適ですが、やはり、構造はただの機械です。ハンマーがピアノ線を叩く構造とは、まったく違う弾き心地を感じます。鍵盤の動きなどは、ピアノに限りなく近づけてはいるのですが、、、やはり本物のピアノとはまるっきり違うんですね。仕方ないですけどね。指を痛めないように、ほどほどにしなくっちゃと思っています。
yu_mama
2017/08/23 14:36
文化会館の方たちのお話を聞くとプロの方たちが引き込みをしてくれるとピアノの音がよく出るようになると聞きました。
昨年、仲道郁代さんがいらした時、仲道さん自らヤマハを指定してお抱えの調律師さんをお願いしていました。
ユーママさんのお抱え?の調律師さんは、日本で指折りなんてすごいことですよね。
パック
2017/09/23 11:30
パックさま
ピアノって生き物なんですね。たまに帰国して弾く時、弾き始めの音はひどいものですが、鳴らし続けるうちに、音がまとまってきます。もちろん、正しい音程に調律するには専門家の手が必要ですが、家のピアノを毎日弾いていれば音色はキープできるように思います。(私のような素人でも) 小さな子だと、弾く音域が限られるので、高音部低音部が狂い始めるのが早いと思いますが、そこそこの大人が弾きこむと、ピアノは音色を戻してくれます。

ヤマハの調律師は、ヤマハの楽器は調律できるけれど、他のピアノはできないと聞いたことがあります。ベーゼンドルファーの調律師の方は、世界のあらゆるピアノを調律してきているので、どんなピアノでも調律できるらしいです。
素晴らしい方と知り合えて、本当に良かったです。
yu_mama
2017/09/23 14:22

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